投資信託の選び方
~投資信託の種類とリスク・リターンの考え方~

1.投資信託の種類と特徴

ここでは、投資信託の仕組みや必要な費用といった基礎知識、そして投資信託の種類をご紹介します。

投資信託の基礎知識

投資信託の基礎知識

投資信託は、資産運用のために用いられる金融商品の一つです。投資家から集めた資金をまとめ、株式や債券に投資する、という仕組みになっています。 そのため、少額の資金から投資が始められる、複数種類の銘柄に分散投資をすることでリスクを抑えられる、という点や、投資の専門家であるファンドマネージャーが運用を担当するため、投資の知識・経験がない方でも始めやすい、という点等が投資信託のメリットです。

投資信託の費用

投資信託の費用

投資信託では、購入や運用、売却といったタイミングで、費用が必要になることがあります。
ここでは代表的な費用をご紹介しますが、投資信託の種類によって、発生する費用は異なります。
実際に投資信託を選ぶ際には、交付目論見書等を確認しましょう。

購入時手数料

投資信託の購入時に支払う手数料です。
購入価額に対して一定の料率をかけることで金額が計算されます。
同じ投資信託でも購入する金融機関によってその金額は異なります。

また、同じ販売会社でも、窓口で購入する場合とインターネットなどで購入する場合で異なることもあります。
購入する投資信託を決めたら、その商品の取り扱いがあるいくつかの金融機関にどのくらい「購入手数料」がかかるのかを聞いてみましょう。

信託報酬(運用管理費用)

投資信託の保有期間中、投資信託の運用・管理にかかる費用として、交付目論見書に記載された計算方法にて、投資信託の純資産総額から差し引かれます。

その他の費用・手数料

投資信託は、監査法人に決算監査を受けるための費用や、証券取引に伴う手数料、組入資産の保管に要する費用等もかかります。

信託財産留保額

信託財産留保額

投資信託を途中で解約する際に支払います。 投資信託を途中で解約した場合、解約した投資家に解約代金を支払うため、投資信託では投資している資産の一部を売却する場合があります。
この場合、資産によっては売却する際に大きなコストがかかります。 そのコストが投資信託全体に反映されることで基準価額が下落し、残存投資家が不利益を被る場合があります。

信託財産留保額は、このような状況を回避するために設けられている費用です。 この費用相当額は、販売会社、委託会社、受託会社のいずれの収益になるものでもなく、売却コストの影響を中立化するために信託財産の中に残留します。
投資信託によって発生するものと発生しないものがあります。

投資信託の種類

投資信託の種類

それでは、投資信託を選ぶに当たって基本となる、投資信託の種類を確認しましょう。
投資信託の種類と一言で言っても、運用手法、投資対象、投資地域、テーマ、分配方針、というように、様々な観点から分類できます。

運用手法

投資信託は、コストやリスク、リターンについての考え方次第で、運用手法が異なります。大きくは、インデックスファンドとアクティブファンドの2種類に分けられます。

インデックスファンドは、市場の平均的な動きを表すインデックス(指数)を基準(ベンチマーク)とし、それに連動した運用成果を目指して運用を行う手法です。ベンチマークとしては、国内であれば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が多く用いられます。インデックスの値動きに受動的(パッシブ)に従う運用を行うことから、パッシブファンドとも言われます。運用にかかる銘柄調査等の労力が後述するアクティブファンドと比較して小さいため、投資家が負担する信託報酬も安価となる傾向にあります。

アクティブファンドは、市場の平均的な動きを上回る運用成果を目指して運用を行う手法です。市場や企業の経営状況などの調査・分析結果を参考に、ファンドマネージャーが銘柄の売買・入れ替えを積極的に行います。運用の自由度が高く、運用にかかる労力も大きいため、投資家が負担する信託報酬の金額も大きくなる傾向にあります。

投資対象

投資対象

投資信託には様々な投資対象が存在し、何を中心に投資を行うかによって、特徴が異なります。投資対象には、主に株式、債券、REITがあり、それぞれに国内のものと海外のものが存在します。 例えば国内債券を中心とした投資を行うものを国内債券型ファンド、海外株式を中心とした投資を行うものを海外株式型ファンドと呼びます。 複数種類の資産に分散投資するものは、バランス型ファンドと呼ばれます。

投資対象によって、リスク・リターンの傾向が異なります。

株式は、原則として発行体から元本が返済されず、また、その価値は主に将来の企業業績と連動します。 つまり、業績拡大による価値上昇期待が大きい一方で、業績不芳や倒産となった場合などに大きく価値が下落する可能性もあるため、リスク・リターンが共に高くなる傾向にあります。

一方で債券は、一般的には発行時に利率と元本返済期限が定められているため、デフォルト等による支払い不履行の可能性はあるものの、株式と比較してリスク・リターンが共に低くなる傾向にあります。

REITの場合、一般的には長期契約に基づく賃料が主な収益源となるため、債券における金利収入のようにある程度将来の収益の確実性が見込めます。
一方で、発行体からの元本返済は行われず、また、賃料や投資している不動産の価格は景気動向の影響等により変動するという株式に近い性格も持ち合わせています。そのため、株式並みのリスクとリターン水準にあると言われます。

種類別の特徴については、この記事の後の部分で、より細かくご紹介したいと思います。

投資地域

海外に投資するファンドは、さらに投資地域によって分けられます。

大きくは、中国、インド、ブラジルなどの新興国に投資するファンド(新興国型)と、北米やEU諸国などの先進国に投資するファンド(先進国型)があります。

新興国型ファンドは、先進国型ファンドに比べ、ハイリスク・ハイリターンになる傾向があります。

テーマ

投資信託には、投資対象や投資地域による分類ではなく、人工知能(AI)関連、資源関連など、特定のテーマに基づいて投資を行うものもあります。 昨今特に注目されているのが、ESGやSDGsをテーマにした投資です。

企業の持続性や将来性といった非財務的価値を測る観点として注目されている、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から投資先を判断する投資を、ESG投資と言います。 近年、国連サミットで採択された国際目標であるSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)を意識した動きが各国で見られるようになっているということもあり、ESGの観点を盛り込んだ投資の動きが増えています。

ESG投資の中でも、「財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資」である「インパクト投資」にも注目が集まっています。

分配方針

投資信託では、委託会社が投資信託の運用によって得た利益等を、分配方針に基づいて分配金として投資家に支払う場合があります。

過去の分配金支払い実績は将来の分配金支払いをお約束するものではありませんが、定期的にお金を受け取りたい場合は安定的な分配金支払い実績のある投資信託を選ぶ、利益を再投資することで長期的に資産を成長させたい場合は、分配金支払いが抑制されている投資信託を選ぶ等、目的に応じた選択が考えられます。

2.投資信託の種類に応じた
リスクとリターン

2.投資信託の種類に応じたリスクとリターン

投資信託の種類について、様々な角度からご紹介してきましたが、実際に投資信託を選ぶに当たっては、リスクとリターンの考えがより重要になります。

ここでは投資信託のリスクとリターンについて、投資対象資産別にご説明します。

国内株式/先進国株式

国内株式/先進国株式

国内株式を投資対象とする投資信託は、債券やREITを投資対象とするものと比較すると、ハイリスク・ハイリターンですが、日本は経済的に成熟した国であることもあり、株式の中では比較的安定したリスクとリターンの水準と言えます。

先進国株式(北米地域や欧州諸国等の株式)を投資対象とする投資信託は、国内株式と同様に投資対象地域の政治的・経済的基盤が安定しており、株式市場の規模も大きいことから、後述する新興国株式ほどの株価の急激な変動は起こりにくいと言えます。

ただし、国内株式にはない為替変動リスクに注意が必要です。

新興国株式

新興国株式

新興国株式を投資対象とする投資信託は、この記事でご紹介する中では、最もハイリスク・ハイリターンと言えます。 新興国は、インフラの整備や新規事業の創出が続々と行われている、成長性の高い国々です。

また、新興国は、労働力が豊富で賃金も先進国に比べると安いことから、先進国の製造業の進出も進みやすい地域です。 若年層の人口が多いことから、国内市場の活性化が進むことも考えられます。このように経済的な成長の見込まれる地域ですので、企業利益の成長期待も大きく、将来の企業利益成長が価格上昇の原動力となる株式には、大きな値上がりが期待できます。

しかし、高いリターンが期待できる分、リスクも高いと考えられるのが、新興国株式の特徴です。 国内の政治動向や外部要因の変動により期待通りに経済成長が進まず、時に大きく成長率が落ち込む場合もあります。 このような時、株式市場も大きく下落する場合が多く見られます。

また、新興国の場合、政府に対する信用度が先進国と比較して低いことから、経済破綻や政治的混乱などのリスク要因が生じた際に、債権者による資金引き上げが行われたりすることで、通貨価値が大きく下落することがあります。 さらに、新興国の場合は市場自体の規模が小さいため、価格変動が大きく出やすく、株価の急速な下落が起こる可能性もあります。

国内債券

国内債券

国内債券を投資対象とする投資信託は、今回の記事でご紹介する中では最もローリスク・ローリターンな投資信託の種類と言えます。

債券の主な価格の変動要因となるのは金利です。 金利が低下すれば、一般的に債券価格は上昇します。

例えば、金利が2%の債券を保有している時に、経済情勢や発行体(国・企業等)の信用力の変化を背景とした市中金利の低下によって同種の債券が1%の金利で発行されるようになった場合、保有している債券の魅力が相対的に高まり、債券価格は上昇します。

逆に市中金利の上昇によって同種の債券が3%の金利で発行されるようになった場合、債券価格は下落します。このように国内債券にあっても、価格の変動要因は存在しますが、株式や海外債券に比べれば値動きは小さいと言えるでしょう。

先進国債券

先進国債券

先進国債券を投資対象とする投資信託は、多くの場合、国内債券よりも利回りが高いのが魅力です。 ただし、海外投資だからこそのリスクもありますので、注意が必要になります。

国内債券と比較して追加的に海外債券が持っているリスクとして大きなものは、為替変動リスクです。 投資国の通貨価値が円に対して下落すると、円換算した場合の利益が現地通貨建の利益よりも小さくなります。

また、海外債券には日本国内債券と比較して信用力の低い国や企業が発行した債券も多く存在し、そのような債券は国内債券と比較して高利回りである一方、信用力の悪化等を背景とした債券価格下落のリスクもあります。

新興国債券

新興国債券

新興国債券を投資対象とする投資信託は、ローリスク・ローリターンである債券の中では、最も利回りが高い種類と言えます。 ただし、債券の中ではリスクが最も高い投資対象と言えます。

新興国株式と同様、新興国に投資する場合は、経済成長の著しい減速や政治的混乱などのリスク要因が生じた際の債券価格および為替のリスクが相対的に高くなります。

国内REIT

国内REIT

国内REITを投資対象とする投資信託は、株式や債券と比べると、株式並みのリスクとリターン水準にあると言われます。

収益源が主に長期契約に基づく賃料収入になるため、収益が安定しやすく、更に賃料は上昇する可能性もあるため、クーポンレートが多くの場合一定である債券と比較すると、リターンは大きい傾向にあります。 逆に、賃料の下落や空室のリスクもあるため、債券に比べると一般的にリスクは高くなります。 また国内REITの場合は、利益の90%を投資家に配当することで法人税の実質免除が受けられる仕組みがあるため、運用利益のうち多くを投資家が分配金として受け取れるというケースが多くなっています。

一方で、不動産ならではのリスクも存在します。 まず不動産に関する法・税制度の変更があった場合に、価格が上下する可能性があります。また、自然災害によって不動産自体が損害を被ることがあり、REITの価格下落に繋がる可能性があります。

このようにREITには、株式や債券とは異なる価格変動要因があり、両者とも異なる値動きをする傾向があることから、株式、債券などの伝統的資産に対する代替投資対象資産(オルタナティブ)として投資家から注目されています。

海外REIT

海外REIT

海外REITを投資対象とする投資信託は、国内REITの場合と同じく、株式並みのリスクとリターン水準の投資信託であると言われます。

国内REITとの違いとしては、為替変動リスクがある点等が挙げられます。また、国内REITと同様、REIT独自のリスクを持っており、株式や債券とは異なる値動きをする傾向があります。

マルチアセット(バランス型)

マルチアセット(バランス型)

マルチアセット(バランス型)投資の場合、株式や債券、REITなど複数の資産に分散投資を行うため、一般的に株式等のリスクが高い資産のみに投資する場合と比較してリスクが小さくなります。

また、特定の資産のみに投資する場合と比較して、負担するリスクに対してより効率的にリターンを獲得することが期待できます。

3.投資信託選びで見るべき項目は?

各種投資信託のリスクとリターンについて理解できたところで、いよいよ投資信託を選ぶ段階です。

まずはご自身の投資の目的や年齢などの状況から、投資スタイルを決め、その上で、各投資信託が自身の投資スタイルに合っているかどうか確認し、最終的な選択をしましょう。

投資スタイルを決める

投資スタイルを決める

まずは投資のスタイルを決めましょう。投資をする目的や、投資できる期間によって、取るべき投資スタイルが変わってきます。

例えば若い方で長期的な投資が可能な場合、リスクが多少大きくても大きなリターンの期待できるものを選ぶことができるでしょう。 一方、投資可能な預貯金があるものの、一定の資金を必要とするライフイベントが控えており、資金をできるだけ減らさず安定的に増やしたいという場合、リターンが大きいことよりもリスクを小さく抑えられることを基準に選ぶということが考えられます。

投資信託を選ぶ際のチェックポイント

投資信託を選ぶ際のチェックポイント

投資スタイルが決まったら、各投資信託が自身の投資スタイルに合っているか、確認しましょう。

各投資信託について個別に確認しておくべき項目を挙げておきます。 交付目論見書等で確認できる部分が多くありますので、投資信託の選択の際の判断材料にしましょう。

運用成績

過去長期にわたって良好な運用成績を残しているファンドは、様々な市場変動を乗り越えて実績をあげていると考えられ、今後の運用成績に期待を持つことができるでしょう。

ただし、市場環境は常に変化しています。過去にうまくいった運用手法が、今後も上手くいく保証はありません。 その投資信託が、どのようにして収益をあげようとしているのかについて理解し、またその方法がこれからもうまくいくと考える背景の説明について自分が納得できるか、という点を重視しましょう。

コスト

将来の運用成績がどうなるのかを正確に把握することはできませんが、コストは確実に運用成績から差し引かれます。

コストが高くても、それを上回るリターンが期待できる投資信託を選ぶことができれば良いのですが、運用が全く同じなのであれば、コストが安いものを選ぶ方が有利だと言えるでしょう。 投資信託にかかるコストには、運用にかかる費用である信託報酬、購入時手数料等がありますので、事前に条件を確認しましょう。

純資産総額

純資産総額とは、投資信託が組み入れている銘柄の時価評価額から負債や費用を除いた金額であり、投資信託の規模を表します。

投資対象

この記事でご紹介してきた通り、投資信託のリスク・リターンの大きさは、投資対象の種類により大きく左右されます。

今回紹介した例の中ではリスク・リターンの最も高い傾向にあるのは新興国株式で、最も低い傾向にあるのは国内債券です。 複数種類を組み合わせた投資信託を選ぶ場合、それらのバランスによってもリスク・リターンの大きさが変わってきます。

ファンドマネージャー

投資判断の中核を担うファンドマネージャーに関する情報を得ておくことが重要です。

経験豊富なファンドマネージャーが長期に渡って良好な運用成績を記録している場合、将来のことは誰にもわからないながらも、そのファンドのパフォーマンスについて再現性をある程度期待することができます。

まとめ

この記事では、投資信託の種類に応じたリスクとリターンの傾向や、投資信託選びで見るべき項目について、ご説明してきました。

投資信託は様々な目的や状況の方に選ばれている資産運用手段の一つです。 ご自身の投資の目的や状況を整理した上で、適切な情報収集をすることで、ご自身に合った投資信託に出会える可能性も高まるでしょう。

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