投資信託の基礎知識
〜投資信託の仕組みやメリットを丁寧に解説〜

老後2,000万円問題が話題になる中、年金や貯蓄について不安を覚え、将来に向けた資産形成のために投資を始めることを検討し始めた方もいるでしょう。
この記事では、数ある資産運用の方法の中でも、特に始めやすい投資信託を紹介します。投資信託なら、少額から、リスクを抑えて資産形成していくことも可能です。老後に必要な資金の考え方や投資の基礎も解説するため、投資の基本から知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

1.投資する意義

将来に向けた資産形成のために行う投資と言っても、それが本当に自分には必要なのだろうか、まだ自分には早いのではないか、と考える方もいるのではないでしょうか。まずは、投資が今注目されている背景、特に若い時から投資をすることのメリットを知っておきましょう。

「高齢化」社会とは、「老後の生活は自己責任」の社会

「高齢化」社会とは、「老後の生活は自己責任」の社会

今や平均寿命が80歳を超える時代。65歳にリタイアすると考えると、その後15年間は生きる可能性が高いということになります。

年金を受給できるとはいえ、ゆとりのある生活を送るためには、ある程度自分自身の財産で生活費を賄う必要があります。しかし、結婚や出産、育児・教育、住宅の購入、介護といったライフイベントに伴う支出も多く、ほぼ金利がゼロとなった銀行預金等への貯蓄によって老後の生活費を賄うだけの財産を築くことはなかなか難しいでしょう。

いわば「老後の生活費は自己責任」ともいえるこの時代、若い時から計画的に資産形成を行うことがますます重要になっていると言えます。

若い時から投資をするメリット

若い時から投資をするメリット

自分自身で財産を蓄えていくことが重要になっている今、若い時に資産運用を始める方も多くなっています。

若い時に資産運用を始め、長い期間をかけて投資することには、「時間を味方にできる」というメリットがあります。どういうことかと言うと、投資期間が長くなればなるほど、目標金額を達成するために必要となる1年あたりの平均リターン(年率リターン)を小さくすることができるのです。

例えば目標金額2,000万円を達成するために、10年しか投資を行う期間がない場合と、20年あるいは30年の期間がある場合では、必要となる年率リターンは後者の方が小さくなります。別の箇所で詳しく説明しますが、一般的に、より高いリターンを獲得するためにはより高いリスクを負担しなければなりません。つまり、時間を味方につけて目標金額達成のために必要となる年率リターンを低くするほど、負担しなければいけないリスクも低くなるということです。なお、ここではわかりやすくするために1年あたり、で説明しましたが、投資開始から目標金額達成までの時間を3か月、6か月、5年など、他の期間で区切った場合でも同様のことが言えます。

余裕のある老後の暮らしのためにも、若い時からじっくり時間をかけて資産形成を進めたいですね。

老後資金の必要額

老後資金の必要額

それでは、老後の生活費を自分自身の財産から賄わなければならないといっても、一体どのくらいのお金が必要なのでしょうか。

2019年6月に金融庁が公表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」によれば、夫65歳以上、妻60歳以上、夫婦のみの無職世帯における平均的な収支は、実支出は約26万円、実収入は約21万円です。そのため、毎月約5万円が赤字となる計算です。

仮にその状態で20年暮らすとなると、約1,200万円、30年暮らすとなると約1,800万円が必要です。

出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を元に当社が作成

投資のリスクとリターンとは?

投資のリスクとリターンとは?

さて、今後の生活、特に老後の生活にゆとりを持てるように、将来に向けた資産形成のための投資が必要とは言うものの、投資にはリスクが付き物です。
なぜなら、投資とはリスクを負担する見返りとしてリターンを獲得する行為だからです。しかし、リスクがあるから、言い換えると、損失が怖いからと言ってただちに投資を諦めてしまうのはもったいないことです。

目標とする時期までに目標金額の資産形成を達成することができる確率を少しでも高めるために、ここでリスクとリターンについて正しく理解しておきましょう。

投資には必ずリスクとリターンがある

投資には必ずリスクとリターンがある

リターンとは、投資により得られる収益を指します(マイナスの収益、つまり損失となる場合もあります)。
一方でリスクとは、「リターンの振れ幅があること」を示し、変動の幅が大きい、つまり投資の効果が不確実であることを「リスクが高い」と言います。

どのような投資にも、リスクとリターンがあります。リスクとリターンの高低は商品次第ですが、一般に、リスクが低いほどリターンが低く(ローリスク・ローリターン)、リスクが高いほどリターンが高い(ハイリスク・ハイリターン)と言う傾向があります。
なぜなら、より高いリスクを負担する時、それに応じた高いリターンが期待できないのであれば、そのような投資先には誰も投資を行わないからです。

例えば、投資信託への投資において投資家が負担することとなる代表的なリスクとしては、以下が挙げられます。

価格変動リスク

投資信託が組み入れている株式や債券の価格は、企業の業績や、国内外の政治・経済の状況によって、変動することがあります。

為替変動リスク

海外株式や海外債券の円建てでの価値は、円と外国通貨の為替レートが変わることによって、変動することがあります。

信用リスク

国や企業といった証券発行体に、経営不振や財政難が起こると、元本や利息を想定通りに受け取れなくなることがあります(債務不履行)。

金利変動リスク

市場金利の変動に応じて、債券の価格が変動することがあります。

流動性リスク

市場の規模・取引量が小さい場合、想定通りの価格で証券の売買ができず、投資信託の運用が影響を被ることがあります。

カントリーリスク

新興国など、政治・経済の状況が大きく変わりやすい地域・国に投資している場合、証券市場に混乱が生じやすく、証券価格の下落に繋がることがあります。

負担するリスクは減らすことができる

負担するリスクは減らすことができる

投資において、一定のリスクは避けられないとはいえ、負担するリスクを減らすことは可能です。
様々な種類の資産に投資することで、前述の各種リスクが顕在化することによる投資資金へのマイナスの影響を抑えることが期待できます。なぜなら、資産によって値上がり・値下がりのタイミングが異なるためです。

例えばある資産が金利上昇によって値下がりしたとしても、別の資産が値上がりしていれば、金利上昇リスクの影響による投資資金へのマイナスの影響を緩和することができます。これにより、例えば5%のリターンを目標にしたときに負担しなければいけないリスクを最低限にすることを目指せます。

また、投資タイミングを複数に分けることで、割高なタイミングで大量購入してしまうことを避けることが可能になります。割高な価格となった資産はその後下落し、下落前の水準を回復するまでには長い時間を要する場合もあります。

投資タイミングを分散し、特に定額で定期的に購入すれば、平均購入単価の上昇を抑え、割高なタイミングで大量購入してしまうことを防ぐ効果が期待できます。

2.投資信託とは?投資信託はどのような人におすすめ?

さて、投資する意義が分かったところで、今回のテーマである投資信託に注目していきます。
投資信託とはどのようなものなのか、どんなメリットがあるのか、そしてどのような人に投資信託がおすすめなのか、確認していきましょう。

投資信託とは?

投資信託とは?

投資信託とは、「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資する商品で、その成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。この「複数の投資家の資金をまとめる」という構造によって、個別の投資家は少額からでも投資が可能となるため、投資に振り向けることができる手元資金が少ない場合や投資未経験者の場合でもチャレンジがしやすい、という点が大きな特徴です。

投資信託は、国内外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)、というように様々な投資対象資産があり、複数の投資信託を組み合わせる、あるいは複数の資産に分散投資する投資信託に投資することなどによって、投資信託以外の資産に直接投資するよりも比較的容易に分散投資を行い、リスクを抑えることも期待できます。そのため、コツコツと堅実な資産形成を行いたい、と考える人にとっては有力な選択肢となるでしょう。

一人一人の年齢、家族構成、財産の状況、支出計画、などに応じて各種資産を組み合わせる(ポートフォリオを組む)ことが可能であるため、資産形成をこれから始める20代から、資産取り崩しや次世代への資産継承を行う老後世代まで幅広い世代の方にとって、それぞれの状況に適した投資が可能になる金融商品だと言えるでしょう。

投資信託のメリット

投資信託のメリット

投資信託は他の投資に比べてどのような良いところがあるのでしょうか。ここで改めて投資信託のメリットを確認しましょう。

少額の資金から投資が始められる

投資信託は、多くの人に購入してもらうために、他の金融商品と比較して少ない金額から投資できるようになっています。

株式投資など他の投資では、数十万という金額が求められる場合もある一方で、投資信託の場合は、1万円程度から投資できるものが多く、中には100円の積立から投資を始められるものもあります。投資信託は、多額の資金を用意しにくいという若い方にも挑戦しやすい投資だと言えるでしょう。

経験がなくてもはじめやすい

投資信託の場合、ファンドマネージャーが運用を担当します。ファンドマネージャーが資産運用の専門家として、金融・経済・企業の業績といった情報を収集し、投資商品の運用方針に基づき投資の判断を行います。
投資経験のない方でも、投資を始める第一歩としてもチャレンジできるのが、投資信託の良いところです。

分散投資でリスクを抑えられる

投資信託の場合は、複数の銘柄、あるいは資産に分散投資をすることで、単一銘柄の株式に投資する場合等と比較してリスクを抑えることができます。

自身の運用方針に合った投資信託を選べる

投資信託は、商品によって、投資資産や投資対象地域、リスクとリターンの水準が異なります。

そのため、リスクやリターンについての考え方次第で、様々な商品の中から一つ、あるいは複数の組み合わせを選ぶことができます。

投資信託はこんな人におすすめ

投資信託はこんな人におすすめ

投資信託のメリットを確認できたところで、改めて自分自身にどのような投資が向いているのか、考えてみましょう。ここではどのような人が投資信託に適しているのか、ご説明します。

少ない金額から資産運用を始めたいと思っている人

株式などの金融商品は、投資をするのに、ある程度まとまったお金が必要なことが多いです。
その点、投資信託は、少額で投資を始めることができる金融商品です。毎月決まった額を積み立てることもできるため、コツコツと資産形成を行うことが可能になります。

投資に割く時間がない人

仕事にライフイベントに忙しい、働きざかりの世代の人は、投資のための知識を獲得する時間も、情報収集し投資判断をする時間も、確保するのが難しいということが多いでしょう。

投資信託の場合、情報収集や運用をファンドマネージャーに任せられますので、投資を始めたいものの、情報収集や投資判断に割く時間がないという人にも、投資信託はおすすめです。

3.投資信託の仕組み

ここでは、少し専門的な話になりますが、投資信託の運営に関わる金融機関や、投資信託から得られる利益についてご紹介します。

投資信託は3つの金融機関によって運営される

投資信託は3つの金融機関によって運営される

投資信託の運営には、主に販売会社、委託会社、受託会社の3つの金融機関が関わっています。

販売会社は、投資家に対し、投資信託の販売や換金、分配金や償還金の支払いなどを行います。投資家の質問や相談に応じる、窓口としての役割も担っています。主に証券会社や銀行、郵便局などが、販売会社です。

委託会社は、投資家から投資信託を通じて集めた資金について、運用方針に沿って投資判断を行い、投資対象となる資産に投資します。投資の専門家として、金融・経済・企業の業績といった情報を収集・分析し、資産の運用を受託会社に対して指示します。また、投資信託の運用方針やリスク、信託報酬などのコストなど、投資信託に関する情報を説明する目論見書の作成や、基準価額の算出も、委託会社が行います。「委託者」や「運用会社」等とも呼ばれます。

受託会社は、委託会社からの指図を受けて、株式や債券など銘柄の売買・管理を行います。また、投資家から集められた資金を保管します。「受託者」や「信託銀行」等とも呼ばれます 。

投資信託から得られる利益

投資信託から得られる利益

投資信託から得られる利益には、譲渡益と分配金の2つがあります。いずれも運用実績に基づいて支払われるものですが、それぞれの特徴をおさえておきましょう。

譲渡益

譲渡益とは、投資信託を換金した際に得られる利益を指します。投資信託には「口(くち)」という、取引を行う際の単位がありますが、それに対して「1口1円」というように価値を表す指標があり、この指標のことを「基準価額」と言います。この基準価額は運用の成果等によって毎日変動するため、投資信託の購入時と換金時では通常基準価額が異なります。購入時の値段よりも換金時の基準価額の方が高ければ、その投資信託を換金した投資家は利益を得ることになります。

分配金

投資信託では、委託会社が投資信託の運用によって得た利益等を、分配方針に基づいて分配金として投資家に支払う場合があります。

過去の分配金支払い実績は将来の分配金支払いをお約束するものではありませんが、定期的にお金を受け取りたい場合は安定的な分配金支払い実績のある投資信託を選ぶ、利益を再投資することで長期的に資産を成長させたい場合は、分配金支払いが抑制されている投資信託を選ぶ等、目的に応じた選択が考えられます。

4.投資信託のタイプ別の特徴

さて、投資信託の仕組みが分かり、実際に投資を検討するという段階になると、気になるのは、どの投資信託を選ぶかという点です。

自分自身に合った投資信託を選べるよう、まずは投資信託のタイプ別の特徴をおさえておきましょう。

投資信託のタイプ別の特徴

投資信託のタイプ別の特徴

投資信託は、運用方法、投資対象、投資地域などのタイプによって、特徴が異なります。

特に注目したいのは、リスクとリターンの違いです。ある程度のリスクがあっても大きなリターンを得たいという方もいれば、リスクは最小限に抑えたいという方もいるはずです。

それぞれのタイプの特徴を知った上で、自分自身にあった投資信託を選びましょう。

運用手法

運用手法

投資信託は、コストやリスク、リターンについての考え方次第で、運用手法が異なります。大きくは、インデックスファンドとアクティブファンドの2種類に分けられます。

インデックスファンドは、市場の平均的な動きを表すインデックス(指数)を基準(ベンチマーク)とし、それに連動した運用成果を目指して運用を行う手法です。ベンチマークとしては、国内であれば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が多く用いられます。インデックスの値動きに受動的(パッシブ)に従う運用を行うことから、パッシブファンドとも言われます。運用にかかる銘柄調査等の労力が後述するアクティブファンドと比較して小さいため、投資家が負担する信託報酬も安価となる傾向にあります。

アクティブファンドは、市場の平均的な動きを上回る運用成果を目指して運用を行う手法です。市場や企業の経営状況などの調査・分析結果を参考に、ファンドマネージャーが銘柄の売買・入れ替えを積極的に行います。運用の自由度が高く、運用にかかる労力も大きいため、投資家が負担する信託報酬の金額も大きくなる傾向にあります。

投資対象

投資対象

投資信託には様々な投資対象が存在し、何を中心に投資を行うかによって、特徴が異なります。投資対象には、主に株式、債券、REITがあり、それぞれに国内のものと海外のものが存在します。例えば国内債券を中心とした投資を行うものを国内債券型ファンド、海外株式を中心とした投資を行うものを海外株式型ファンドと呼びます。複数種類の資産に分散投資するものは、バランス型ファンドと呼ばれます。

投資対象によって、リスク・リターンの傾向が異なります。株式は、原則として発行体から元本が返済されず、また、その価値は主に将来の企業業績と連動します。つまり、業績拡大による価値上昇期待が大きい一方で、業績不振や倒産となった場合などに大きく価値が下落する可能性もあるため、リスク・リターンが共に高くなる傾向にあります。

一方で債券は、一般的には発行時に利率と元本返済期限が定められているため、デフォルト等による支払い不履行の可能性はあるものの、株式と比較してリスク・リターンが共に低くなる傾向にあります。

REITの場合、一般的には長期契約に基づく賃料が主な収益源となるため、債券における金利収入のようにある程度将来の収益の確実性が見込めます。
一方で、発行体からの元本返済は行われず、また、賃料や投資している不動産の価格は景気動向の影響等により変動するという株式に近い性格も持ち合わせています。そのため、株式並みのリスクとリターン水準にあると言われます。

投資地域

投資地域

海外に投資するファンドは、さらに投資地域によって分けられます。

大きくは、中国、インド、ブラジルなどの新興国に投資するファンド(新興国型)と、北米やEU諸国などの先進国に投資するファンド(先進国型)があります。
新興国型ファンドは、先進国型ファンドに比べ、ハイリスク・ハイリターンになる傾向があります。

まとめ

投資や投資信託の基本を確認できたところで、自分にはどのような投資が合っているか、検討してみましょう。確認してきたように、投資の手段の中でも、投資信託は幅広い世代、多くの方に開かれた投資です。

これを機にぜひ一度、投資信託の活用を通じた資産形成を検討してみてはいかがでしょうか。

最新情報をゲット

T&Dアセットマネジメント
ソーシャルメディア公式アカウント

お気に入り
ファンド